このページでは、対象物の観察方法の一つである「暗視野観察」について解説しています。デジタルマイクロスコープを使って暗視野観察を行う方法や、暗視野観察の仕組み、メリットなどを解説していますので参考にしてください。
暗視野観察とは、観察対象となる試料(サンプル)へ斜めから光を当てて、その際に生じた反射光や錯乱光を観察する方法です。視野全体は暗くなるため暗視野となり、その中で試料が浮かび上がるように見えることが特徴です。
暗視野観察はガラスやレンズのように透明な試料の観察や傷の確認、可視光の波長よりも微少なものを観察したり、異物を検出したりする場合などに有効な観察方法とされています。
デジタルマイクロスコープを使って暗視野観察を行うためには、一般的に専用の照明装置(暗視野照明装置)やローアングルLED照明装置といった機器が用いられます。
暗視野観察のポイントは、サンプルが浮かび上がるように光を当てることです。これを「暗視野効果」と呼びます。
暗視野観察は20世紀初頭に開発された観察方法であり、サンプルを事前に染色する必要がなく、透明なサンプルであってもそのまま観察することができます。
暗視野観察を実現するための暗視野効果を生み出すには、サンプルへ照射する光の当て方が重要です。
通常、サンプルへ直接に光を当てても暗視野効果は発生しません。そのため、直接光を遮りつつ、被写体へ斜めから光(斜光線)を当てることが必要となります。
サンプルへ当てた直接光が観察されてしまうと、全体が明るくなって肝心のサンプルや微少な傷などを観察することができません。直接光が対物レンズへ入らないよう透過照明部にスリットなどを使用し、サンプルを通して反射・屈折・回折した斜光線だけが観察できるように光の方向や角度を制御してやることが必要です。
暗視野観察では、対象として観察したいサンプルの部分だけが闇の中で浮かび上がるように見えます。透明なサンプルでも染色などの前処理を行わずに観察できる上、通常の観察方法では光に紛れて見えなくなってしまうような微少な傷や、ガラス表面に生じた透明な傷なども観察できることがメリットです。
また、特殊な薬剤などを使用しないため、暗視野効果を得られる環境を整えられればランニングコストを抑えられることも重要です。
明るい視野ではぼやけて見えそうなサンプルの輪郭や境界、コントラストの低い部分でも、はっきりと見えるということも有益なポイントとなります。
コストを抑えて優れた観察結果を得られる暗視野観察ですが、一方で暗視野観察を正確に行おうとすれば課題が存在していることも無視できません。
暗視野観察では、光源から発せられた光の大半が遮断された上でデジタルマイクロスコープに観察されます。そのため、暗視野観察でも明確なサンプルの可視化を目指そうと思えば、照射する光の絶対量を上げなければなりません。
場合によっては光に弱いサンプルもあり、長時間の観察に不適切というケースもあるでしょう。
サンプルが薄すぎたり、スライドが汚れていたりすると、背景に色が付いたり不正確な観察結果が得られたりします。そのため、そのような場合はサンプルの調整方法を再検討するか、標本を再設置するといったことを行います。
暗視野効果を得られるようにコンデンサーを交換したり、専用の照明装置を使用したりしますが、これらの調整方法や位置合わせが不十分であると焦点がずれて見えたり、視野の一部に暗点が生じたりします。
サンプルに当たっている照明にムラがあるように見えたり、標本そのものには焦点が合っているのに一部だけ見えにくかったりする場合、改めて機器の調整などを行わなければなりません。
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