このページでは、デジタルマイクロスコープの選定時に重要となる「倍率」について、倍率ごとに観察できる対象物の考え方や、倍率の計算法、適切な倍率の選び方などをまとめて解説しています。
倍率が高ければ高いほど細かいものを拡大して観察できるようになるため、高倍率のデジタルマイクロスコープほど高性能な製品であるという考え方もできます。しかし、必ずしも高倍率のデジタルマイクロスコープを購入することが最適な考え方であるとは限らないことも事実です。
重要なのは何を観察したいのか、そして観察対象に対して倍率が適正な範囲に合致しているかという点です。また、過剰に高性能なデジタルマイクロスコープはコスト面でのデメリットを拡大する恐れもあるでしょう。
倍率の最も簡単な計算方法は、例えば定規の1mmの幅を撮影して、モニター上にどれくらいのサイズで表示されているかを確かめることです。定規の1mmの幅が1cmに拡大されていれば、その表示倍率は「10倍」であると判断できます。
とはいえ、実際の使用を目的として倍率を考える場合、事前に倍率を確認したり設定したりしておくことが必要です。
光学顕微鏡では、接眼レンズと対物レンズの倍率を掛け合わせた数値が顕微鏡の倍率となります。そのため、例えば100倍に対象物を拡大したい場合、接眼レンズが5倍であれば、対物レンズには20倍を選択するといった方式です。
一方、画面に映し出された対象物を確認するデジタルマイクロスコープには接眼レンズが存在しません。そのため、デジタルマイクロスコープではデジタルカメラの対物レンズ(光学倍率)や撮影素子サイズといった性能が倍率計算に重要です。加えてモニターのサイズもポイントです。
モニターサイズを大きくするほど画面は拡大されますが、デジタルカメラで撮影できる画像の情報量がモニター性能に適合していなければ、拡大率に反比例して画質が悪化します。
デジタルマイクロスコープの倍率計算式は以下のようになります。
マイクロスコープの倍率 | 観察可能な対象 |
---|---|
1倍 | 肉眼で見えるもの |
2~5倍 | 虫眼鏡で見える程度 |
10~20倍 | 微生物や小さな部品などの全体像 |
50倍 | 昆虫の器官や小さな部品などの構造 |
100倍 | 微生物や微少部品などの形状 |
200倍 | 花粉のような微少サイズの構造 |
400倍 | ミドリムシなど細胞生物の形状 |
800~1500倍 | 細胞や染色体などの構造(0.2μm程度のもの) |
2000倍~100万倍 | 1μm~0.1nmのサイズ |
分解能とは、細かいものを細部まで正確に認識・撮影するための能力です。正確には、隣り合っている2つの対象物を、どれだけ細かい条件下まで区別できるかといった性能で計算されます。
例えば、2つの対象物の間に1mmの距離が空いている場合と、2つの対象物の間に0.1mmの距離が空いている場合、両方の条件下で等しく2つの対象物を確認するには分解能にも10倍の範囲差が求められます。もしも分解能として1mmが識別限界であった場合、0.1mmの距離しか離れていない2つの対象物は1つに重なって見えてしまい、正確に識別することができません。
分解能を左右する要素の1つが光です。開口数とは対物レンズへ光を取り込むための経路であり、開口数が大きいレンズほど光を取り込みやすく、分解能も高めやすいことが特徴です。
そのため、デジタルカメラの性能や倍率を考える場合、分解能や対物レンズの開口数などもチェックすることが必要です。
なお、対物レンズの開口数が大きくても、デジタルマイクロスコープを使用する環境や設置場所の条件が光学的に整っていなければ、製品の性能を完全に発揮できないことも覚えておきましょう。
デジタルマイクロスコープの性能や倍率は、他にも様々な指標や数値によって確認できますが、実際の見え方や光学性能は使ってみなければ確かめることができません。
カタログスペックでは高倍率で優れた分解能を備えているデジタルマイクロスコープであっても、例えば画面に映した際の色彩に違和感があったり、細部がぼやけていたりすれば使用に不具合が生じることもあります。
加えて、画面の見え方や解像度はモニターの種類やメーカーによっても異なる可能性があり、本当に使いやすいデジタルマイクロスコープを選択するためには可能な限り実機を試して、光学性能を自分の目で確かめるようにしてください。
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